2025.12.28 07:50美しいものを観ることから成長する心美しいものを観ることから成長する心――心理学・美術教室・社会学の視点から――私たちは日々、無数の「もの」を目にして生きている。けれども、その中で「美しい」と立ち止まり、心を動かされる体験は、どれほど意識されているだろうか。美しいものを観るという行為は、単なる鑑賞にとどまらず、人の心を育て、思考を深め、社会との関わり方にまで影響を与える、極めて人間的な営みである。1.心理学から見る「美」と心の発達心理学において「美を感じる体験」は、情緒の安定や自己調整能力と深く関係しているとされている。美しいものに触れたとき、人の脳内では快の情動が生まれ、安心感や落ち着きがもたらされる。これは、ストレスを和らげ、心を開いた状態をつくる働きを持つ。特に子どもにとって、美し...
2025.12.23 14:50子どもの手子どもの手子どもの手は、単なる「道具」ではありません。そこには、感じたことを受け取り、考え、想像し、形へと導く力が宿っています。一本の線、ひとつの色、そのすべては手を通して心とつながり、まだ言葉にならない思いまでも表現へと変えていきます。子どもたちは、手を使うことで未知の世界を創り出します。それは正解のある作業ではなく、自分だけの発想を試し、広げ、深めていく行為です。その過程にこそ、創造性や主体性、そして生きる力が育まれていきます。障害の有無は、創造の本質とは関係ありません。鉛筆の持ち方や手の使い方が一般的でなくても、それは「間違い」ではなく、その子なりの表現のかたちです。大切なのは、どのように持つかではなく、何を思い、何を生み出そうとしているのかとい...
2025.12.21 11:20今日の美術教室。今日の美術教室。あらゆる美術実践における子どもの想像性・受容性と指導者の省察1.背景・目的事前準備が十分でなかったものの、実施された美術教室において、子どもたちが示した想像性・発想の柔軟性、およびその過程を俯瞰的に捉えた指導者自身の省察を記録・分析することを目的とする。特に、計画された教材や画材の有無が、子どもの想像的思考にどのような影響を及ぼすのかについて、実践を通して考察する。2.実践の概要本実践は、前日に突発的な依頼を受けて開講した美術教室である。指導者は依頼を受諾したものの、当初想定していた画材が揃わないという不安を抱えた状態で臨んだ。しかし、教室開始後、子どもたちはその状況を抵抗なく受け入れ、提示された環境の中で主体的に制作活動へと没入してい...
2025.11.30 11:14アートへの関わり方とウェルビーイング・心身健康への効果研究考察― アートへの関わり方とウェルビーイング・心身健康への効果 ―1. はじめに近年、アートは鑑賞・創作・対話・共同制作など多様な形で人々の生活に取り入れられ、ウェルビーイングや心身の健康を高める手段として注目されている。教育心理学、芸術療法、社会心理学、ポジティブ心理学など複数領域の研究が示すように、アートは単なる趣味活動ではなく、人の情緒調整、自己認識、社会関係形成、意味づけの力を強化する心理社会的アプローチとなり得る。2. アートへの関わり方の分類アートの効果は「どのような関わり方をするか」によって異なる。研究文献を整理すると大きく以下に分類できる。関わり方 &...
2025.11.29 05:06アートで発達に課題のある子どもたちにどこまで活路が見出されるのかアートで発達に課題のある子どもたちにどこまで活路が見出されるのか―教育心理学・発達心理学・芸術療法の視点から―1. 序論(研究背景)近年、発達に課題のある子ども(発達障害、知的障害、情緒的課題、社会適応の困難など)に対する支援において、美術活動(以下、アート)が注目されている。アートは言語能力や学力に依存しない表現媒体であり、自己理解・情緒調整・対人交流・自己効力感の向上を促す可能性が指摘されている。特に、「認知的機能の凸凹」や「感覚特性」を抱える子どもにとってアートは有力な表現手段となりうる。しかし、アートによる支援の効果は個々の特性や環境差により大きく異なるため、「どこまで活路が見出されるのか」について実証的議論が求められている。2. 研究目的本レ...
2025.11.15 06:04― 子どもにとって美術活動は必要不可欠なのか ―なぜ、どうして美術活動をするのか?― 子どもにとって美術活動は必要不可欠なのか ―1. はじめに近年の教育現場において、美術教育はコア教科学習に比して周縁化されやすく、技能学習・情操教育の補助と捉えられがちである。しかし、発達心理学・教育心理学・神経科学・社会情動学習(SEL)の研究は、美術活動が子どもの認知・情緒・社会性の発達に複層的に寄与することを示している。本研究の目的は、美術活動がなぜ子どもにとって必要不可欠といえるのかを学術的視点から検討し、その教育的意義を明確にすることである。2. 研究背景子どもの発達プロセスは、単に学力向上のみで説明できるものではなく、認知能力・情緒の安定・社会性・自己形成・自己効力感など多面的な成長が統合されることで成...
2025.11.14 12:00―「創造性の土壌を耕す」から「理解としてのデザイン」へ―デザインの「面白がり方」に関する考え。―「創造性の土壌を耕す」から「理解としてのデザイン」へ―1.はじめに立命館大学にて開催された、来年度開講予定のデザイン・アート学部に向けたセミナーでは、「創造性の土壌を耕す」というテーマのもと、デザインの捉え方や向き合い方について議論が展開された。セミナー内では「デザインの面白がり方」がキーワードとして取り上げられ、デザインが知的好奇心を刺激する対象であることが強調された。しかしながら、本レポートでは「面白がる」ことにのみ焦点を当てるのでは不十分であり、デザインを観察し、思考を働かせることで深い理解を学び取るプロセスこそが本質であるという立場から考察を行う。2.デザインの概念に関する再検討一般的に「デザイン」は視覚...
2025.11.05 14:15障害があってもなくても子どもは、想像をいっぱい働かせてアートで楽しく遊ぼう障害があってもなくても子どもは、想像をいっぱい働かせてアートで楽しく遊ぼう― 包摂的美術教育における想像と心的発達の意義 ―キーワード:成長 特別支援教育美術 発達障害美術 発達心理学 美術教育 包括的な教育要旨(Abstract) 本レポートは、障害の有無にかかわらず、すべての子どもが「想像」を働かせながらアートを楽しむことの教育的・心理的意義を論じるものである。アート活動は、単なる造形表現ではなく、個の内的世界を具現化する創造的プロセスである。ヴィゴツキーの発達理論やガードナーの多重知能理論、岡田清らによる美術教育論を踏まえ、想像的活動が子どもの自己表現、情動調整、社会的相互理解にどのように寄与するかを検討する。また、障害のある子どもにおいても、ア...
2025.10.22 11:44子どもが自己表現することの心理学的意義子どもが自己表現することの心理学的意義1.報告の目的本報告は、美術教育を通して行った実践において、子どもが「自己表現」を行うことの心理学的意義を明らかにすることを目的とする。現代の子どもたちは、他者との比較や評価に敏感であり、自身の考えや感情を素直に表現することが難しい傾向が見られる。そこで、本実践では「上手に描くこと」よりも「自分の思いやイメージを自由に表すこと」を重視し、表現行為が子どもの心の発達にどのような影響を及ぼすかを検討した。2.実践の概要これまでの活動では、子どもが「これを作ってみたい」「こんな世界を描きたい」と自らの内的動機づけによって制作を進めた。制作過程での発言や行動、作品の変化を通して、心理的発達の傾向を観察した。3.理論的背景(...
2025.10.19 13:15体験会を通してみる幼児の心の成長。体験会を通してみる幼児の心の成長 本日、11月から開校する「想像を育む美術教室」の体験会を行いました。参加してくれた幼児たちは、それぞれの心の中にある“思い描く力”を存分に発揮し、自由で豊かな作品を生み出しました。制作の途中から完成に至るまで、幼児たちは笑顔を絶やさず、創作の過程そのものを楽しんでいました。1. 「想像」の表現は、自己形成の第一歩教育心理学において、幼児期は「自己の確立」の基盤が形づくられる重要な時期です。この時期の子どもたちは、外界の刺激を受け取りながら「自分なりの世界」を心の中でつくり始めます。今回の活動でも、素材を手にした瞬間からそれぞれが独自の想像を思い描き、「こうしたい」「こんなの作ってみたい」と言葉や行動に表していました。こ...
2025.10.16 13:20想像を育む美術教室想像を育む美術教室― 豊かな心を育てるアート教育 ―1.教育理念本教室は、「美術の技術を学ぶ場」ではなく、「美術を通して心を育てる場」です。描く・作るという行為を通して、自分の中にある思いや考えを形にすること。その体験が、達成感や成功体験を生み、やがて豊かな想像力と心の成長へとつながります。長年、大学で「想像」と「心の発達」に関する研究を続けてきた教育理論を基盤に、すべての人が自分らしく表現できるアート教育を実践しています。2.対象年齢や特性を問わず、どなたでもご参加いただけます。•幼児(3歳)から小・中学生•高校生・大学生•成人・高齢者(認知症の方を含む)•発達に課題のある方も安心して通えます。3.学びの特長 • 完全予約制・個別対応 他の受講生を気...
2025.07.27 02:18美術活動がもたらす発達に課題のある子どもたちへの効果美術活動がもたらす発達に課題のある子どもたちへの効果― 心理学的・教育学的視点からの考察 ―1. はじめに発達に課題のある子どもたちに対する支援のあり方は多様であり、その一環として美術活動は注目を集めている。美術活動は、感覚的な刺激と自己表現を通して、子どもの認知的、情緒的、社会的な側面の成長を促すことができる。特に、発達障害(ASD、ADHD、LDなど)を有する子どもにおいては、言語的表現が困難である一方、視覚的・感覚的なチャンネルを通じた表現は比較的得意とするケースも少なくない(堀田・杉山, 2018)。本稿では、美術活動が発達に課題をもつ子どもたちに与える影響について、心理学的および教育学的視点から考察する。2. 美術活動の基本的特性と意義美術活...