2025.06.04 02:11子どもにおける美術教育の原点に関する一考察。子どもにおける美術教育の原点に関する一考察。美術教育において重要な要素の一つは、「その瞬間」における構図やシチュエーション、さらに色彩を的確に観察する力と考えています。この観察行為を出発点として、子どもは自らのこれまでの経験や想像を内面から引き出し、それらを組み合わせることによって、創造的な表現を生み出します。すなわち、外的な視覚的要素と内的な想像力の融合によって、個々の美術的表現が成立します。このような創造行為において、美術は単なる技術習得の対象ではなく、子ども自身の主体性を育む媒体として機能しています。美術を通じた表現活動は、自己理解や他者理解、さらには感情のコントロールや意思決定力など、広義の「生きる力」と深く関わっています。以上の観点から、美術...
2025.06.04 02:08美術教育における子どもたちとの共創的世界観の形成。美術教育における子どもたちとの共創的世界観の形成。想像力を媒介とした教育実践の考察。はじめに本研究は、美術教育の現場において、子どもたちと共に「世界観」を想像・構築するプロセスの意義と、その教育的効果について考察するものです。従来の美術教育が技能習得や作品制作の完成度に重きを置いてきた一方で、近年では非認知能力や創造的思考、自己表現の重視が求められています。本研究では、子どもたちの想像力を起点にした対話的・探求的なアプローチに焦点を当て、教育者と子どもが対等な立場で「共に創る」世界観の実践例を分析します。背景と目的子どもたちは、成長過程において自己と世界の関係性を多様な感覚と経験を通して築いていきます。その過程で、美術は「見えないものを見る力」、すなわ...
2025.06.01 05:20幼児期から小学生期におけるアート表現活動の認知・創造性発達への影響。幼児期から小学生期におけるアート表現活動の認知・創造性発達への影響。―クレヨン・絵の具の着色とちぎり絵の活動を通して―1. はじめにアート活動は、子どもの表現力・創造性・認知的発達において中心的役割を果たします。特に年長組(5〜6歳)から小学校中学年にかけては、自己表現の多様性が広がり、発達段階に応じた感覚運動的・認知的経験が相互に結びつく重要な時期です。このレポートでは、クレヨン・絵の具による着色、およびちぎり絵を中心としたアート活動が、子どもの発達にどのような影響を及ぼすかを、発達心理学および教育心理学の観点から考察します。2. アート活動の概要と発達段階2.1 クレヨン・絵の具による着色クレヨンや絵の具による着色活動は、視覚的・触覚的な刺激を伴い...
2025.05.26 00:28アート活動の意義と発達支援における役割。先日の授業からアート活動の意義と発達支援における役割。達成感・想像力・自己表現が育む「生きる力」。1. はじめに発達に課題のある子どもたちは、認知、言語、社会性、運動などの面で特有の困難を抱えることがあります。しかし、そうした困難を「能力の欠如」として捉えるのではなく、「異なる表現や学びのスタイル」として理解するアプローチが近年注目されています。アート(美術)活動は、その子どもたちが自分らしく表現し、自己肯定感や達成感を得るうえで非常に有効な手段であり、また、将来的な「生きる力」を育む土台ともなります。2. アート活動の心理学的・発達的効果2-1. 非言語的コミュニケーションの促進。発達に課題のある子ども、特に自閉スペクトラム症(ASD)や言語発達遅滞...
2025.05.23 12:555月23日のアート活動レポート。本日のアート活動レポート本日のアート活動は、子どもたちの活気と想像と創造力に満ちた、非常に賑やかな時間となりました。それぞれの子どもたちが自由な発想で、さまざまな形や色彩を使い、豊かな技法を用いて思い思いに表現する姿が見られました。そうした表現の中で、子どもたちは達成感を感じ、自分の作品に誇りを持つことができたようです。自然と笑顔が溢れ、その笑顔は「できた!」という自信から生まれたものであると感じました。指導にあたった僕自身も、子どもたちの想像と創造性からなる笑顔に触れ、とても楽しく充実した時間を過ごすことができました。今後も、子どもたちが自分の表現に夢中になれるようなアート活動を進めて行きます。
2025.05.22 02:03いつもなら表現豊かにアート活動をするのですが、その能力が発揮できるように見えなかったことから原点に戻り塗り絵をしました。本日は、いつもなら表現豊かにアート活動をするのですが、その能力が発揮できるように見えなかったことから原点に戻り塗り絵をしました。この一連の出来事を考察します。1. 状態依存的パフォーマンス(State-Dependent Performance)心理学において、「状態依存的学習」や「状態依存的パフォーマンス」と呼ばれる現象があります。これは、個人の心理的・身体的状態(気分、疲労、ストレスなど)が、その人の能力やパフォーマンスに影響を与えるというものです。たとえば、同じ子どもでも、リラックスして安心できる状況と緊張や不安を感じている状況では、まったく違った行動や成果を示すことがあります。2. ユニバーサルデザイン教育(Universal Design f...
2025.05.18 02:053歳児におけるアート活動の実践とその心理的影響に関する観察報告。3歳児におけるアート活動の実践とその心理的影響に関する観察報告。本報告では、3歳児を対象としたアート活動における思考の変化および自己肯定感の高まりについての記録です。活動には30名の児童が参加し、終始活気にあふれた雰囲気の中で実施できました。活動開始前、児童は各々自由なテーマでの描画に取り組むことにやや不安を見せる様子も見られましたが、制作を進めるうちに表情が柔らぎ、描き終えた際には達成感とともに満面の笑顔を浮かべる児童が多数確認されました。活動後には「もう一枚描きたい」との声が全員から上がり、自発的な創作意欲の高まりが顕著に観られました。中には5枚の作品を描き上げた児童もいて、活動が個々の表現欲求に強く働きかけたことが示唆されます。このようなアート活...
2025.05.12 13:05表現することの意義:教育実践と学術的視点から今日のアート活動から(年長組幼児)表現することの意義:教育実践と学術的視点から1. 消しゴムを使わなくなった ―「やり直さない」から「受け入れる」へ表現活動において消しゴムを使わないという実践は、子どもたちに「間違いは学びの一部である」という認識を育てます。これは、教育心理学でいう「成長マインドセット(Dweck, 2006)」の育成に通じます。試行錯誤を繰り返すプロセスそのものに価値を見出し、結果よりも過程を大切にする態度が培われるのです。2. 失敗を恐れなくなった ― リスクを取ることができる安全な環境表現活動は「正解のない問い」に向き合う機会を提供します。失敗を恐れずに自分の内面を表現することは、心理的安全性(Amy Edmondson, 199...
2025.05.12 09:45今日のアート活動 〜年長組の底力〜今日のアート活動 〜年長組の底力〜今日は年長組の幼児とのアートの時間でした。たった2時間ほどの活動時間で、これだけの作品を仕上げられる力には、本当に驚かされます。でも、これは決して「今日だけ」の力ではありません。日々の積み重ね、日常の中で磨かれてきた表現力と集中力の賜物だと感じます。豊かな色彩、しっかりと構成された構図。どの作品からも、子ども自身の「やり切りたい」という意志や、自分の世界をしっかりと描き出したいという思いが伝わってきました。そして何より、負けず嫌いな性格が良い方向に作用し、最後まで妥協せずに取り組む姿勢が、作品のクオリティを一段と高めていたように思います。これからどんなふうに表現の幅が広がっていくのか、どんな世界を描き出していくのか。そ...
2025.05.11 08:45子どもの心の成長を促すアート活動 ― 想像力とレジリエンスの関係性に着目して ―子どもの心の成長を促すアート活動 ― 想像力とレジリエンスの関係性に着目して ―はじめに現代社会において、子どもたちが直面する課題は複雑化しています。学力やスキルに加えて、非認知能力、特に「心の力」(レジリエンス、共感性、自己表現力など)が重視されるようになっています。アート活動を通じて育まれる心の成長に焦点を当て、特に想像力がどのように子どもの内面を豊かにし、困難を乗り越える力に繋がるのかを検討します。アート活動と心の発達の関係アートは単なる技能の習得ではなく、感情の表現、自我の確立、他者との共感形成に寄与する創造的な活動です。心理学者ローウェンフェルド(Lowenfeld, 1947)は、子どもの発達段階に応じた美術活動の重要性を提唱し、創造的表現...
2025.05.11 02:07「直感と論理をつなぐ思考法」から着想を得た、発達に課題のある子どもの美術教育に関する考察の一例以下は、「直感と論理をつなぐ思考法」から着想を得た、発達に課題のある子どもの美術教育に関する考察の一例です。はじめに近年、教育において「非認知能力」や「創造性」の重要性が強調される中、美術教育の再評価が進んでいる。特に、発達に課題のある子どもにとって、美術は自己表現の手段としてのみならず、認知発達や社会的スキルの涵養においても意義深い教育的価値を持つ。そこで本稿では、著者:佐宗邦威による『直感と論理をつなぐ思考法』における思考の枠組みを援用し、美術教育における発達支援の可能性を考察する。1. 「直感」と「論理」の統合的思考モデル佐宗邦威は、創造的思考を「直感」(感覚的・感情的・身体的な知)と「論理」(分析的・構造的・言語的な知)との循環的プロセスとして...
2025.05.07 00:00発達に課題を抱える子どもたちと芸術活動の教育的意義発達に課題を抱える子どもたちと芸術活動の教育的意義―表現を通じた心の成長と学びの可能性―発達に課題を抱える子どもたちは、しばしば従来の学力評価では測ることのできない豊かな能力を秘めています。そうした力を引き出す鍵として、芸術的な表現活動が注目されています。ここでは、4つの理論や研究成果をもとに、その教育的意義を考えてみます。まず、ハワード・ガードナー(1983)の多重知能理論では、人間の知能は「論理的・言語的能力」だけでなく、「身体・運動的知能」や「音楽的知能」、「内省的知能」など、さまざまな形で表れるとされています。たとえば、教室でじっとしていられない子どもが、リズムに合わせて踊るときに高い集中力を発揮することがあります。このように、芸術的活動は、発...