2025.08.25 14:49工作キットを通じた想像と創作の学術的考察工作キットを通じた想像と創作の学術的考察1. はじめに本報告は、子どもがペーパークラフトによる旅客機の制作を行う過程において示した発言や想像の広がりを観察し、その教育的意義を発達心理学・教育心理学の観点から考察するものである。特に、知識の再生にとどまらず、想像力や思考の柔軟性が発揮される点に注目する。2. 活動の概要対象児はペーパークラフトで旅客機を制作した。その際、一つひとつの部品を組み立てるごとに「これは飛行に役立つ部位である」と説明を加え、まるでパイロットのように飛行原理を語った。また、知識として得ている情報に自身の想像を加え、飛行の仕組みを物語的に語る姿が観察された。3. 発達心理学的考察ピアジェの認知発達段階論によれば、幼児期から児童期にかけ...
2025.08.18 23:50想像力と表現力を重視したアート活動の教育的意義想像力と表現力を重視したアート活動の教育的意義はじめに本研究の目的は、アート活動における「想像力」と「表現力」の関連性を明らかにし、特に発達に課題のある子どもたちにおける教育的効果を検討することである。従来の美術活動は、色彩や形態の美しさに焦点を当てる傾向が強い。しかし、本活動では「見た目の美しさ」よりも「想像から表現へとつなげる思考過程」に重点を置いた。方法活動では、子どもに日常的な素材である紙コップを提示し、それを出発点に自由な想像を展開させた。作品づくりの過程において、子どもは素材の持つ制約を受けつつも、その制約の中で独自の発想を見出し、新しい造形表現へと昇華させることが期待された。結果観察の結果、子どもたちは紙コップという限定的な素材を起点に、...
2025.07.27 02:18美術活動がもたらす発達に課題のある子どもたちへの効果美術活動がもたらす発達に課題のある子どもたちへの効果― 心理学的・教育学的視点からの考察 ―1. はじめに発達に課題のある子どもたちに対する支援のあり方は多様であり、その一環として美術活動は注目を集めている。美術活動は、感覚的な刺激と自己表現を通して、子どもの認知的、情緒的、社会的な側面の成長を促すことができる。特に、発達障害(ASD、ADHD、LDなど)を有する子どもにおいては、言語的表現が困難である一方、視覚的・感覚的なチャンネルを通じた表現は比較的得意とするケースも少なくない(堀田・杉山, 2018)。本稿では、美術活動が発達に課題をもつ子どもたちに与える影響について、心理学的および教育学的視点から考察する。2. 美術活動の基本的特性と意義美術活...
2025.07.21 14:54廃材工作活動における計画性・創造性の育成と心の成長 ― 教育心理学的視点からの考察 ―廃材工作活動における計画性・創造性の育成と心の成長 ― 教育心理学的視点からの考察 ―1. はじめに幼児期は、自己の感情や行動を内省し、他者と関係を築くための心的発達が著しい時期である。この時期の教育活動には、自己肯定感や自己効力感、計画性といった非認知能力の育成が重要であるとされている(Dweck, 2006)。本レポートでは、廃材を用いた工作活動を通じて、子どもがどのように計画を立て、創造し、完成させる過程で心の成長を遂げるのかを教育心理学的に考察する。2. 廃材工作の教育的意義廃材とは、日常生活で不要となった紙箱、ペットボトル、段ボール、布などの素材であり、子どもの自由な発想を刺激する要素を多く含んでいる。こうした素材を使う工作活動は、与えられた...
2025.07.21 14:46アート活動における想像力・達成感・思考の育成と主体性の醸成。アート活動における想像力・達成感・思考の育成と主体性の醸成。-特に発達に課題のある子どもへの意義-1. はじめに近年、幼児教育・特別支援教育の分野において、芸術活動の持つ教育的意義が再評価されている。アート活動を通して得られる想像力、達成感、思考力の形成は、子どもの心身の発達において極めて重要な役割を果たす。本稿では、特に発達に課題のある子どもたちに焦点をあて、アート活動がもたらす多面的な教育効果について論じる。2. アート活動の教育的価値2.1 想像力の育成アート活動は、子どもが自らの内面を表出し、新たな視点を創造する場である(Eisner, 2002)。とりわけ絵画や造形などの自由表現の中では、言語による表現が難しい子どもであっても、自己の感情や世...
2025.06.26 11:14幼児・子どもにおける日本文化を通じた想像心と社会教育の成長幼児・子どもにおける日本文化を通じた想像心と社会教育の成長―伝統的感性と共同性を育む文化的環境の意義―1. はじめに幼児期の子どもは、日々の経験の中で想像力を発達させ、社会性を育んでいく。この時期に接する文化的環境、とりわけ日本における伝統文化や美意識は、子どもの内的世界を豊かにし、社会的態度の形成にも寄与する。特に日本文化に内在する「間(ま)」「わび・さび」「型と即興」などの概念は、子どもたちの感性や想像力を刺激し、他者との協調や社会的価値観の涵養を促す重要な要素である。本稿では、日本文化が幼児・子どもの想像心と社会教育にどのような影響を与えるかを考察し、その教育的意義を明らかにする。2. 日本文化にみられる想像力と社会性の基盤2.1「間」と「空白」...
2025.06.23 11:09発達に課題のある子どもに向けた美術教育の可能性発達に課題のある子どもに向けた美術教育の可能性―想像と思考を原動力とした達成感の育成―1. はじめに発達に課題を抱える子どもたちにとって、自分の意思で「やってみたい」と思える活動に出会うことは極めて重要である。これは単なる学習の導入としての意味にとどまらず、その子どもが主体的に現代社会を生き抜く力、すなわち「生きる力」の源泉ともなりうる。本稿では、美術教育がそのような子どもたちの好奇心を刺激し、達成感をもたらす教育的実践であることを論じる。そして、その根底には「想像」と「思考」が不可欠な原動力として機能していることを明らかにする。2. 発達に課題を抱える子どもたちの特性発達障害を含む発達に課題を抱える子どもたちは、言語的・身体的・感覚的な特性が多様であ...
2025.06.17 13:44美術教育は、子どもにとって社会にとって必要不可欠です。美術教育は、子どもにとって社会にとって必要不可欠です。美術教育による思考力・想像力の発育とそこから生まれる能力の拡散。1. はじめに現代社会においては、単なる知識の習得にとどまらず、自ら思考し、他者と協働しながら創造的に問題を解決する能力が重視されている。そのような背景の中で、美術教育は、知的発達や情緒的成長を支える教育的手段として再評価されている。特に幼児期から児童期における美術教育は、思考力と想像力の発育に寄与し、それが他の学問領域や社会的スキルへと拡散していく可能性を秘めている。本稿では、美術教育が子どもの思考力・想像力に与える影響を考察し、そこから波及する能力の多面的発展について論じる。2. 美術教育における思考力と想像力の定義。美術教育におけ...
2025.06.16 12:52―創造的表現活動における思考の発達プロセスの探究―子どもの思考力は、アートから生まれる―創造的表現活動における思考の発達プロセスの探究―要旨(Abstract)本研究は、幼児期におけるアート活動が子どもの思考力の発達に与える影響を探究するものである。観察調査および先行研究の検討を通じて、アート表現が内発的動機づけを促進し、問題解決力・想像力・メタ認知などの高次認知機能に寄与することを明らかにした。アートは単なる表現手段にとどまらず、子どもの思考を可視化し、深めるプロセスであることが示唆された。⸻1. はじめに(Introduction)21世紀型スキルの重視が進む中で、従来の知識伝達型教育から脱却し、思考力・創造力の育成が求められている。特に幼児期は認知発達の基礎を形成する重要な時期であり、思考力の育...
2025.06.15 13:29―創造的表現活動における思考の発達プロセスの探究―子どもの思考力は、アートから生まれる―創造的表現活動における思考の発達プロセスの探究―要旨(Abstract)本研究は、幼児期におけるアート活動が子どもの思考力の発達に与える影響を探究するものである。観察調査および先行研究の検討を通じて、アート表現が内発的動機づけを促進し、問題解決力・想像力・メタ認知などの高次認知機能に寄与することを明らかにした。アートは単なる表現手段にとどまらず、子どもの思考を可視化し、深めるプロセスであることが示唆された。⸻1. はじめに(Introduction)21世紀型スキルの重視が進む中で、従来の知識伝達型教育から脱却し、思考力・創造力の育成が求められている。特に幼児期は認知発達の基礎を形成する重要な時期であり、思考力の育...
2025.06.15 11:13子どもたちの美術教育:思考の発達からなる心の教育とは子どもたちの美術教育:思考の発達からなる心の教育とは子どもたちの美術教育は、単なる技術習得にとどまらず、内面的な心の育成や思考の発達に密接に関係している。近年、非認知能力(自己制御、共感性、創造性など)が子どもの将来的な幸福感や社会的成功に大きな影響を与えることが明らかにされ(Heckman, 2006)、美術を通じた教育実践は、その発達において重要な役割を果たすと考えられている。美術活動において、子どもは自分の感情や考えを形にし、他者と共有する経験を積む。このプロセスは、自己理解や他者理解を深める上で非常に有効であり、子どもの内面世界の拡張に寄与する(岡田, 2012)。また、創作における試行錯誤や問題解決の過程は、論理的思考と直感的判断のバランスを...
2025.06.10 01:08「合生の形象からみる美術」という表現を多角的視点から掘り下げてみます。「合生の形象からみる美術」という表現を多角的視点から掘り下げてみます。「合生(ごうせい)」とは何か?「合生」という言葉は一般的な日本語にはあまり見られませんが、漢字から意味を読み解くと、「合」=集まる、融合、統合「生」=生命、生成、いのちの営みと解釈できます。つまり「合生」は異なるものが交わり、新たな生命や形象を生み出すことと捉えられます。これは、自然界の生成、共生、循環や、異文化の融合、新しいアイデアの誕生などとも結びつく概念です。美術における「合生の形象」この概念を美術と結びつけると、以下のような視点が考えられます。1.異質な要素の融合としての創造例えば現代アートでは、絵画と音楽、テクノロジーと身体、東洋と西洋など、異なる要素が融合して新たな表現が...