研究レポート:子どもの美術教育における「想像すること」の意義と影響。

研究レポート:子どもの美術教育における「想像すること」の意義と影響。

はじめに

現代社会において、情報や技術の進化により、既存の知識を蓄積するだけでは対応しきれない課題が増加しています。こうした背景の中で、「想像する力」は、子どもたちが自らの人生を主体的に切り開いていくために不可欠な能力とされています。

このレポートでは、子どもの美術教育の視点から、「想像すること」がもたらす事柄、変化、思考の働きについて考察します。

1. 想像することで生まれる事柄。

想像することは、目に見えないものを心の中で描き出す行為であり、新たな「かたち」や「意味」、「関係性」を創造する基盤である。美術教育においては、以下のような事柄が生まれます。

•新しい表現の創出:既存の素材や技法にとらわれず、子どもたちは独自の視点で作品を生み出します。

•物語性の構築:描く・作るプロセスの中で、登場人物や世界観が育ち、作品にストーリー性が付加されます。

•感情の具現化:言語化しきれない感情を、色や形、動きとして可視化することが可能になります。

2. 想像することで生まれる生き方の変化。

想像力を通じて子どもたちは、自分自身や他者、そして社会に対する見方を柔軟にし、多様な価値観を受け入れられるようになります。

•自己肯定感の向上:自身の内なる世界を作品として表現することにより、「自分にもつくれる」「自分の考えに価値がある」と感じる経験が積み重なります。

•他者理解の深化:異なる視点や表現に触れることで、他者の感じ方や思考を想像し、共感的な姿勢が育ちます。•主体性の獲得:課題に対し「どう表現するか」を自分で考え選ぶことで、能動的な生き方が形成されます。

3. 想像することで働く思考。

美術活動の中での「想像」は、以下のような多様な思考を促進します。

•発散的思考(Divergent Thinking):一つのテーマに対して多様な解決策や表現方法を探る思考が活性化されます。

•メタ認知的思考:制作中に自分の表現や意図を内省し、より良い方法を模索する過程で「自分の考えを考える」力が育ちます。

•批判的思考:自分や他者の作品を見つめ直すことで、「なぜこの表現なのか」「どうすればもっと伝わるか」といった視点から評価する力が養われます。

まとめ

美術教育における「想像すること」は、単なる創作活動にとどまらず、子どもの生き方や思考の在り方に深く関わっています。想像力は、未知の未来を生きる子どもたちにとって、問題解決や人間関係の構築、そして自己実現の土台となるものです。

美術を通じて「想像する力」を育むことは、教育の根幹に位置づけられるべきです。


大場六夫's Art Random 僕の美術教育論

アートは、膨大だ。想像は、無限。そのアートを子どもたち(障害児を含む)と一緒に取り組んでいます。参加者募集中です。全国どこからでも参加いただけます。

0コメント

  • 1000 / 1000