廃材を活用した造形活動による美術教育導入の試み

廃材を活用した造形活動による美術教育導入の試み

抵抗感のある幼児へのアプローチとしての制作活動の意義

1. はじめに

美術教育の初期段階においては、一般的に描画活動が導入されることが多い。しかし、すべての子どもが初めから自由に絵を描くことに親しみを持てる訳ではない。特に、描くことに対して不安や抵抗を示す幼児にとっては、描画という手段が自己表現の障壁となることがある(小野, 2012)。本研究では、廃材を用いた造形活動を美術教育の導入部門として位置づけ、形あるモノづくりを通じて想像力や思考力を育み、描画活動へと自然に移行する可能性を検討する。

2. 活動の概要と方法

本活動は、これまで美術教育に馴染めない子どもを対象とした美術教育の導入段階として行った。使用する材料は、段ボール、紙筒、お菓子のパッケージなどの廃材である。子どもたちはこれらの素材を自由に選び、接着、切断、装飾といった工程を通じて、自身の思い描く「カタチ」を創造した。

活動では以下の観点に注目した。

•素材との関わりから生まれる発想の広がり。

•組み合わせや構造を考える際の思考の深まり。

•作品完成後の自己表現の満足感と次なる創作意欲へのつながり。

3. 考察

3.1 形あるものから入ることで広がる想像の世界

幼児にとって、見たり触ったりできる具体的な素材は、抽象的な描画よりも親しみやすい傾向がある(高橋, 2018)。廃材を用いた活動では、子どもたちは「何に見えるか」「何が作れるか」といった問いを自然に立て、自らの経験や空想と結びつけて新たなイメージを生み出す。このプロセスは、想像の出発点として非常に有効である。

3.2 思考のプロセスと構造的理解

廃材を組み合わせるためには、素材の特性を理解し、構造的に安定する方法を考える必要がある。これにより、子どもたちは試行錯誤を通じて論理的思考力や問題解決力を働かせる場面が多く見られた(文部科学省, 2020)。

3.3 美術への抵抗感を和らげる「ものづくり」からの導入

描画に抵抗のある子どもにとって、形ある「作品」を生み出すことで得られる達成感は、自己肯定感や表現への自信を育てる土台となる。

4. 結論

廃材を用いた造形活動は、美術教育の導入部門として非常に有効であると考えられる。特に描画活動に抵抗を感じる子どもにとって、具体的な素材を通じて「作る」体験は、想像力と思考力を引き出し、美術活動全体への関心と意欲を高める契機となる。

本取り組みは、今後の美術教育における導入方法の多様性を示唆するものであり、より広範な実践と検証が求められる。

参考文献

•小野啓子(2012)『子どもの表現活動とその支援』萌文書林

•高橋伸子(2018)『遊びと造形の保育学』光生館

•文部科学省(2020)『幼稚園教育要領解説』文部科学省


大場六夫's Art Random 僕の美術教育論

アートは、膨大だ。想像は、無限。そのアートを子どもたち(障害児を含む)と一緒に取り組んでいます。参加者募集中です。全国どこからでも参加いただけます。

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