2025.06.06 00:52子どもの「想像する力」と発達:能力差を超えて育まれる想像的成長。子どもの「想像する力」と発達:能力差を超えて育まれる想像的成長。子どもが描く「想像」は、単に芸術的な活動にとどまらず、心の内側にある世界を言語とは異なる形で表現する重要な手段である。特に美術活動における自由な創造は、認知的・情緒的・社会的な発達と密接に関わっている(Vygotsky, 2004; Eisner, 2002)。この「想像する力」は、子どもが自己を見つめ、他者とつながり、世界と関わるための基盤であり、能力の優劣や障害の有無にかかわらず、すべての子どもにとって発達の可能性を拓く鍵となる。例えば、発達に遅れや特性のある子どもであっても、絵画や造形などの表現活動を通じて、自らの感覚や経験を再構成し、内的世界を外化することができる。このプロセスは、...
2025.06.05 04:41幼児のクレヨン選択における思考と心理的プロセス幼児のクレヨン選択における思考と心理的プロセス―アート思考・認知心理学的視点からの考察―1. はじめにアート活動において子どもが色を選び、構成していく過程には、創造的思考や心理的動機づけが色濃く表れる。今回の事例では、年長児が使用していたクレヨンの色数が限られてきた状況で、同一のクレヨンセットを再提示した際、新たに使っていなかった色を選び直感的に描画を再開した。この行動は、アート思考の観点からどのように捉えられ、また心理的にはどのような認知的・動機づけ的プロセスが働いていたのかを考察する。2. アート思考における解釈アート思考(Art Thinking)は、美術的行為を通して「既成概念を疑い、新たな視点を獲得する思考のあり方」である(福原義春, 201...
2025.06.04 02:11子どもにおける美術教育の原点に関する一考察。子どもにおける美術教育の原点に関する一考察。美術教育において重要な要素の一つは、「その瞬間」における構図やシチュエーション、さらに色彩を的確に観察する力と考えています。この観察行為を出発点として、子どもは自らのこれまでの経験や想像を内面から引き出し、それらを組み合わせることによって、創造的な表現を生み出します。すなわち、外的な視覚的要素と内的な想像力の融合によって、個々の美術的表現が成立します。このような創造行為において、美術は単なる技術習得の対象ではなく、子ども自身の主体性を育む媒体として機能しています。美術を通じた表現活動は、自己理解や他者理解、さらには感情のコントロールや意思決定力など、広義の「生きる力」と深く関わっています。以上の観点から、美術...
2025.06.04 02:08美術教育における子どもたちとの共創的世界観の形成。美術教育における子どもたちとの共創的世界観の形成。想像力を媒介とした教育実践の考察。はじめに本研究は、美術教育の現場において、子どもたちと共に「世界観」を想像・構築するプロセスの意義と、その教育的効果について考察するものです。従来の美術教育が技能習得や作品制作の完成度に重きを置いてきた一方で、近年では非認知能力や創造的思考、自己表現の重視が求められています。本研究では、子どもたちの想像力を起点にした対話的・探求的なアプローチに焦点を当て、教育者と子どもが対等な立場で「共に創る」世界観の実践例を分析します。背景と目的子どもたちは、成長過程において自己と世界の関係性を多様な感覚と経験を通して築いていきます。その過程で、美術は「見えないものを見る力」、すなわ...
2025.06.03 02:00幼児のアート活動における色選択と認知の変容。幼児のアート活動における色選択と認知の変容。〜同一素材の再提示が生む新たな創造性〜1. はじめに。本研究は、2025年6月2日に実施された年長組のアート活動において観察された、同一の画材(クレヨン)を再提示することで幼児の色彩選択に変化が見られた事例に着目し、そこに働いた心理的要因および認知的な変容について考察するものである。A2. 活動の概要。当日のアート活動では、「下書きをしない」「消しゴムを使わない」という方針のもと、幼児は自由に想像を膨らませ、その勢いでクレヨンで描き始めた。初めに用意されたクレヨンセットは、後に提供されたものと全く同一の種類である。しかし、後から提示されたクレヨンを手に取った際、幼児はこれまで使用しなかった新たな色を選択し始め...
2025.06.02 11:35発達に課題のある子どもにおけるアート活動への取り組み姿勢とその発達的意義。発達に課題のある子どもにおけるアート活動への取り組み姿勢とその発達的意義。今回のアート活動に参加した発達に課題のある子どもたちにおいて、今回は作品としての完成には至らなかったものの、活動に取り組む姿勢から多様な発達的成長が観られた。特に注目されたのは、アート活動に参加することを目標に据え、それに向けた日常生活の自己調整行動である。一例として、ある児童はアート活動を見通した上で、それに先立って学校の宿題を終わらせたり、公園遊びの時間を調整するなど、自ら計画を立てて行動する様子が見られた。これは、「見通しを持つ力」や「実行機能(executive function)」の一端を育む行動と捉えられ、発達的にも重要な意味を持つ。このように、作品の完成という結果だ...
2025.06.01 05:20幼児期から小学生期におけるアート表現活動の認知・創造性発達への影響。幼児期から小学生期におけるアート表現活動の認知・創造性発達への影響。―クレヨン・絵の具の着色とちぎり絵の活動を通して―1. はじめにアート活動は、子どもの表現力・創造性・認知的発達において中心的役割を果たします。特に年長組(5〜6歳)から小学校中学年にかけては、自己表現の多様性が広がり、発達段階に応じた感覚運動的・認知的経験が相互に結びつく重要な時期です。このレポートでは、クレヨン・絵の具による着色、およびちぎり絵を中心としたアート活動が、子どもの発達にどのような影響を及ぼすかを、発達心理学および教育心理学の観点から考察します。2. アート活動の概要と発達段階2.1 クレヨン・絵の具による着色クレヨンや絵の具による着色活動は、視覚的・触覚的な刺激を伴い...