廃材工作活動における計画性・創造性の育成と心の成長 ― 教育心理学的視点からの考察 ―

廃材工作活動における計画性・創造性の育成と心の成長 ― 教育心理学的視点からの考察 ―

1. はじめに

幼児期は、自己の感情や行動を内省し、他者と関係を築くための心的発達が著しい時期である。この時期の教育活動には、自己肯定感や自己効力感、計画性といった非認知能力の育成が重要であるとされている(Dweck, 2006)。本レポートでは、廃材を用いた工作活動を通じて、子どもがどのように計画を立て、創造し、完成させる過程で心の成長を遂げるのかを教育心理学的に考察する。

2. 廃材工作の教育的意義

廃材とは、日常生活で不要となった紙箱、ペットボトル、段ボール、布などの素材であり、子どもの自由な発想を刺激する要素を多く含んでいる。こうした素材を使う工作活動は、与えられたものではなく、自分で考えて形にするという主体的な学びを促す(Vygotsky, 1978)。

3. 計画性と見通しを持つ力の発達

工作には「何をつくりたいか」「どの素材をどう使うか」を考える計画的思考が必要である。このプロセスにおいて、遂行機能(executive function)、特に計画立案能力と自己制御能力が発達する(Diamond, 2013)。子どもたちは完成までの工程を予測し、素材の配置や順序に思考を巡らせることで、先の見通しを持つ力を育んでいく。

4. 想像から創造へのプロセス

廃材工作では、頭の中でイメージしたものを具現化する必要がある。これは「想像力」と「創造力」が連動するプロセスである。Piagetの認知発達理論によると、操作的思考が育ち始める年長期には、具体的な素材を媒介とした創作活動が、思考の柔軟性と創造性の発達を促すとされている(Piaget, 1962)。

5. 自己肯定感・自己効力感の育成

工作を完成させたときの「できた!」という体験は、達成感を通して自己肯定感と自己効力感(Bandura, 1997)を育てる。特に、計画から完成までを自分の力でやりきる経験は、「自分はできる」という信念につながり、学びへの動機づけ(motivation)を高める。

6. 心の成長との関連

こうした一連の経験は、情動の安定や自己認識力の発達に寄与する。廃材工作は、創造的自己表現の場であり、自分の考えや感じたことを形にすることで、情緒的成熟や自己理解の深化が促される(Erikson, 1950)。さらに、仲間と協力して素材を分け合う場面では、社会性や共感性の育成にもつながる。

7. まとめ

廃材工作は単なる造形活動にとどまらず、子どもの思考力・計画性・創造力・自己肯定感・社会性といった非認知的スキルを多面的に育む活動である。教育心理学の視点からも、こうした活動は子どもの心の成長にとって重要な意味を持つことが明らかになった。今後も、廃材を活用した創造的な学びの場を広げることが、教育現場に求められる。

引用文献

•Bandura, A. (1997). Self-efficacy: The exercise of control. New York: Freeman.

•Diamond, A. (2013). Executive functions. Annual Review of Psychology, 64, 135–168.

•Dweck, C. S. (2006). Mindset: The New Psychology of Success. Random House.

•Erikson, E. H. (1950). Childhood and Society. W. W. Norton.

•Piaget, J. (1962). Play, dreams and imitation in childhood. New York: Norton.

•Vygotsky, L. S. (1978). Mind in society: The development of higher psychological processes. Harvard University Press.


大場六夫's Art Random 僕の美術教育論

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