〈ダンボール工作の発育的意義〉
― 3週間集中して仕上げた作品から見える発達 ―
今回の作品は、3週間という長い期間、集中力を切らすことなく取り組み続けた点に大きな成長が見られます。
ダンボールや割り箸、紙を組み合わせ、細部にまで工夫して仕上げた姿には、子どもの想像力・計画性・遂行機能が豊かに働いていました。
■ 1. “頭の中の設計図”を形にする【認知発達】
実際に紙に描いた設計図がなくても、
「頭の中に完成形がイメージでき、それを作りながら微調整していく」
これは、幼児期後半に育つ 心的イメージ力(メンタルイメージ) の発達を示します。
心的イメージを保持し、作業しながら修正し続ける力は、
● 問題解決
● 創造的思考
● 作業記憶
を支える重要な認知能力です。
■ 2. 3週間持続した集中力【行動心理学・実行機能】
長期間にわたって活動を続けられることは、
「やりたい」「完成させたい」という内発的動機づけが強い証拠です。
さらに、
● 途中でやめない
● 次回どう続けるか考える
● 完成までの段取りを自分で組む
といった行動には、実行機能(EF:Executive Function) の伸びが見られます。
特に
・ワーキングメモリ
・注意制御
・計画力
の向上が顕著で、年長児にとって非常に良い学びの経験です。
■ 3. 材料への工夫は「創造性の成熟」【教育心理学】
ダンボールだけでなく、割り箸を使ったり紙を貼ったりと素材を変えながら進めたのは、
「目的に応じて最適な素材を選び、使い分ける力」 の発達によります。
これは、創造性研究でも重視される
➤ 適切な手段を選択しながら目的を達成する創造性(高次の創造性)
に当たります。
単に思いつきで作るのではなく、完成度を高めるための判断ができる段階に達した証です。
■ 4. 想像力とリアリティの橋渡し【発達心理学】
頭の中のイメージを、実際の素材と向き合いながら形にする経験は、
空想の世界と現実世界の間を行き来する発達的プロセス です。
この作業を繰り返すことで、
● 自己効力感(自分にはできるという感覚)
● 達成感
● 自分の考えを形にする自信
が強くなり、今後の学習や社会性にも大きく影響していきます。
■ 5. 工作活動がもたらす心の安定【情緒発達】
手を動かし、集中し、作品が徐々に形になる過程は、
子どもにとって非常に安心感をもたらします。
「今日はここまで、次はこうしよう」
と、自分で物事を進められる経験は、
情緒の安定と自己調整力を高める効果があります。
〈まとめ〉
今回の3週間にわたるダンボール工作の完成は、
• 計画性
• 創造性
• 実行機能(集中力・注意・段取り)
• 心的イメージ能力
• 素材選択の判断力
• 自己効力感・達成感
など、年長児に必要な発達要素が総合的に育ったことを示す、非常に価値の高い活動でした。
工作という一見シンプルな活動の中に、
子どもの心・認知・行動の発達がぎゅっと詰まっています。
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