アート活動による「見通し」の支援に関する考察
「見通しをもつこと」とは、これから何をするのか、どのように進み、どこに辿り着くのかを心の中で思い描く力である。
発達段階にある幼児や、発達に課題のある子どもにとって、この見通しを立てることは容易ではない。言語的説明だけでは理解が難しく、不安や戸惑いとして表れることも多い。
1. アート活動が生む“曖昧な見通し”
アート活動の特徴は、最初から正解や完成形が固定されていない点にある。
「こう描かなければならない」「こう作らなければならない」という枠組みが弱いため、子どもは明確な完成図を持たなくても活動に参加できる。
この「曖昧さ」は一見すると不安定に見えるが、実は
• 自分の感覚に従って進めてよい
• 途中で変えてもよい
• 失敗が成立する
という心理的安全性を生み、結果として子どもなりの見通し形成を支えている。
2. 行為の積み重ねが「先を想像する力」を育てる
アートでは、
• 色を置く
• 形をつくる
• 重ねる、消す、壊す
といった行為の連続の中で、「次はどうしよう」という小さな選択が繰り返される。
このプロセスは、完成を先取りするのではなく、今の行為から少し先を想像する力を自然に育てる。
特に発達に課題のある子どもにとっては、
「最後まで見通す」よりも
「一歩先を感じ取る」ことが重要であり、アート活動はその発達段階に極めて適合している。
3. 見通しが“体感”として理解される
言葉による説明が難しい子どもでも、アート活動では
• 手の動き
• 画材の変化
• 目に見える痕跡
を通して、「始まり→途中→変化→一区切り」を身体で理解できる。
これは、
『見通しを“理解する”のではなく、“経験として知る”』支援であり、認知的負荷を下げながら、時間的・構造的な感覚を育てる。
4. 不安の軽減と主体性の回復
見通しが持てない状態は、不安や回避行動につながりやすい。
しかしアート活動では、
• 自分のペースで進められる
• 途中で止まってもよい
• 大人が評価で先回りしない
という環境が、「自分で進めてよい」という感覚を育てる。
この感覚こそが、見通しの土台であり、
「やってみよう」「続けてみよう」という主体性へとつながっていく。
5. 支援としてのアート活動の意義
アート活動による見通しの支援とは、
子どもに先の計画を教え込むことではない。
寧ろ、
• 迷いながら進むこと
• 変化を受け入れること
• 自分なりの終わりを見つけることを肯定的に経験させることで、生きる中で必要な「柔らかな見通し」を育てる支援である。
まとめ(理念的視点)
アート活動は、
「見通しが立てられない子どもを支援する」のではなく、
「見通しが定まらなくても進める力」を育てる教育である。
その積み重ねが、子ども自身の中に
未来への安心感と、思考のしなやかさを育んでいく。
アート活動による「見通し」の支援
大場六夫's Art Random 僕の美術教育論
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