美術教育からみた「感覚統合」
―「感じる」ことから「想像する・つくる」へ―
美術活動というと、「絵が上手に描けること」や「きれいな作品を完成させること」を思い浮かべるかもしれません。しかし、子どもの美術活動には、それだけではない大切な学びがあります。
それが、見る・触る・動かす・感じるといったさまざまな感覚を、自分なりにまとめていく「感覚統合」です。
■ 美術活動は、たくさんの感覚を使っている。
例えば、クレヨンで絵を描くとき、子どもは単に「線」を描いているだけではありません。
* 色を見る
* クレヨンの硬さや滑りを手で感じる
* 力加減を調整する
* 手や指を動かす
* 描いたものを目で確認する
* 「ここに色をつけよう」と考える
* 描いたものから新しいイメージを思い浮かべる
このように、視覚・触覚・運動感覚などを同時に働かせながら表現しています。
つまり美術活動は、感覚を使いながら「感じたこと」と「自分の考え」を結びつける活動でもあります。
■ 「ちぎる・貼る」だけでも大切な経験。
例えば、紙を細かくちぎって貼る活動。
一見すると単純な作業ですが、
見る → 手で触る → 力を調整する → ちぎる → 場所を考える → 貼る
という複数の経験が含まれています。
さらに、「この色をここに置いてみよう」「もっと貼ってみよう」という選択が加わることで、感覚と認知、そして想像がつながっていきます。
■ 「正しく描く」より「感じて表現する」。
美術教育では、子どもが大人の見本を正確に再現することだけを目標にする必要はありません。
線が曲がっていても、色が一般的なイメージと違っていても、
「自分はこう感じた」
「こうしてみたい」
「こう見えた」
という経験そのものが重要です。
自分で感じ、考え、選び、表現する。
その繰り返しが、感覚を整理する力だけでなく、自分の考えを表現する力や主体性にもつながっていきます。
■ 発達に課題のある子どもにとって。
発達に課題のある子どもの場合、感覚の受け取り方や身体の動かし方、注意の向け方などに個人差があります。
だからこそ、「みんなと同じ作品を完成させる」ことよりも、その子が安心して感覚を使い、自分なりの方法で表現できる環境が大切になります。
例えば、
「今日は触ってみた」
「紙をちぎることができた」
「いつもと違う色を選んだ」
「自分から描き始めた」
「描いている途中で笑顔になった」
こうした小さな変化も、美術教育では大切な成長のサインとして捉えることができます。
■ 美術教育における感覚統合とは。
簡単にまとめると、
感覚を使う
↓
感じる
↓
気づく
↓
考える
↓
想像する
↓
自分なりに表現する
↓
「できた」という経験を得る
という循環です。
したがって、美術教育は単なる「絵の描き方を教える時間」ではありません。
子どもが自分の身体と感覚を使って世界を知り、そこから想像を広げ、自分自身を表現していく時間でもあります。
そして、その「自分で感じて、自分で考えて、自分でつくった」という経験が、少しずつ自信や自己効力感(自分ならできるという感覚)につながっていくと考えられます。
美術は、完成した作品だけを見る教育ではなく、
「感じる・気づく・想像する・つくる」という子どもの過程を見る教育でもある。
この視点から見ると、子どもの「らくがき」や「ちぎる・貼る」「粘土」「ブロック遊び」なども、想像と感覚を結びつける大切な美術教育の一部として捉えることができます。
子ども美術想像研究所
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